進化しすぎた GPU の災禍

それでも敢えていうならば

Vistaは見た目がすごくなった

というのは,宇宙語しか喋らない開発者の話を辛抱強くかみ砕き,持ち上げにくいへんてこな OS に対して,マーケティングの人々が必死に考え出した 1 つの回答なんだと思う.考えてみれば,マーケティングの人々だって必死だったはずだ.それは大変な苦労だったと思う.
それでも敢えてプログラマとしてこの話題を取り上げる言い訳でも考えてみよう.
まず非常に原始的な GPU の使い方しかしていないのに,一般人に「見た目が綺麗 == GPU を激しく活用」と刷り込みを行われると心が痛いというのが 1 つ.
あと考えられる理由としては,「見た目が派手 == 重い」といった変な思いこみをされると思わぬところで火の粉が降りかかってくることがあるので,知らず知らずのうちに防衛本能が働いているのかもしれない.何というか,耳を澄ませば,最近,そういう恐怖の足音がひたひたと後ろについて回るようになった気がする.
いや,変なのは今のハードウェアの方か.近年のハードウェアは非常に気難しく,ソフトウェアの実装方法でスループットが数桁変化する.今スルッと数桁と書いたけど,数桁というのは本当にえげつない.界王拳だってせいぜい 10 倍だろう.1 桁なんて大したことはない.アプローチ次第で手のひらを返したように対応が変わる近年のハードウェアの性格の方が余程恐ろしい.ツンデレここに極まれりだ.
その結果どうなったかというと,出力結果からブラックボックスの中身を推し量るのが非常に難しくなってしまった.一枚の絵を見せられただけでは,中にいるのが界王拳 1000 倍のヤムチャなのか,界王拳 0.1 倍の孫悟空なのか本当に区別がつかない.動画だって信用できなくて,「実はプリレンダでした」みたいは話は以前からあった.
もちろん,本当の意味でのお客さんには,中にいるのがヤムチャだろうが孫悟空だろうがどっちでもいい.とにかく「普通に」動いてくれればそれでいい.
これが開発者だと,中身はとにかく結果が遅ければ何かヘマをやらかしているというのは分かる(逆はややこしい).もちろん,戦闘中に暗黒星雲からの電波を受けてひらめいた画期的ソート方法(学名:バブルソート)を全面採用してしまうような避けられるヘマと,人の身でありながら不遜にも NP 問題に真正面から挑みました(結果負けました)みたいな不可避のヘマがあるが,その辺は基本的に楽屋ネタの世界だ.
困るのは,そういう内輪ネタで盛り上がった後に,PC 売り場に繰り出したときのことである.そこには「孫悟空的究極性能」という札を首からかけられ,人々の前に引きずり出された,0.1 倍孫悟空の姿があった.
続く.(ウソです続きません)