書籍紹介: C# .NET アプリケーション開発 徹底攻略

毎日コミュニケーション山口様に献本していただきました.紹介がすっかり遅くなってしまい,すみません.

C# .NETアプリケーション開発 徹底攻略 C# 3.0/.NET Framework 3.5対応

C# .NETアプリケーション開発 徹底攻略 C# 3.0/.NET Framework 3.5対応




本書を一言で表せば,C# を用いたシステム開発者による,開発者視点でのノウハウ集です.現役の SIer の方が,.NET Framework を構成するいくつかの要素技術をどのように評価しており,また現場の知恵としてどのような点に気をつけているかが書かれています.
「はじめに」に書かれているとおり,本書は.NET Framework の『リファレンス系』書籍でも『Tips系』書籍でもありません.

筆者は、SIer (システムインテグレーター) として業務アプリケーションの開発の仕事を持っています。しかし、現実的に多くの開発者の方は、リファレンスレベルの知識についてはよく理解していますが、業務アプリケーションレベルの開発ができていないと感じることがあります。

それは、かなりの部分で経験や蓄積された知識が必要とされるものです。これらの要素をなるべく体系的に、簡単にまとめたいと思ったのが本書の始まりです。本書の内容は、業務アプリケーションの開発に携わった多くの開発者の方が、迷った・ハマった・間違った経験を踏まえ、最も効率的に開発方法が理解できるように考えました。

本書の内容を理解した方は、開発現場においても即戦力となるはずです。これは、現場で責任を持つものとして断言できます。筆者の思想は完全に現場寄りですので、難しいことは好みません。理論・理屈よりはコストに対する結果を出すことが大事だと考えています。本書によって、少しでも効率的で「シンプル」な開発が実現できることを願っています。

1.2 対象とする読者

本書は、以下のような人を対象としています。

  • C#開発経験があり、言語仕様について一通り理解できている人
  • C#でマルチスレッドプログラミング開発を行う人
  • C++Java等のオブジェクト指向言語経験者で、C#開発を始める人
  • .NET Frameworkでシステム開発を行う設計者、開発チームリーダー

Chapter 01では開発ツールであるVisual Studio 2008の機能と、開発で必要となるデバッガの使用方法についてを様々な状況を踏まえ紹介します。

Chapter 02では.NET Frameworkを使用したアプリケーションの基本的知識を解説。言語仕様の本質的理解とマルチスレッドアプリケーションの設計に関わる知識、例外管理、.NET Frameworkの枠を超えたWin32API連携の方法について紹介します。

Chapter 03では.NET Frameworkに関する性能問題について発生頻度の高いポイントに重点を置き対策方法を紹介します。またメモリープロファイリング、パフォーマンスプロファイリングの手順を確認します。

Chapter 04ではClickOnceを使用したアプリケーションデプロイ方法、セキュリティを考慮したアプリケーション、著作物の保護等アプリケーションのリリース管理方法について確認します。

Chapter 05では既存のアプリケーション資産を有効活用する方法として、.NET FrameworkとCOMが混在したアプリケーションの配布・管理の方法、また.NET Frameworkで作成したアプリケーションをCOMとしてブラウザに埋め込み、利用する方法を解説します。

Chapter 06では.NET Frameworkによる新しいクロスプラットフォームであるSilverlightを紹介します。C#の新しい規格であるC# 3.0の主要機能についても解説を行います。

約 250 ページとコンパクトな本ですが,多くの部分に著者の地道な調査の跡を見ることができました.本書の行間には,実際に開発現場で直面する様々なトラブルや議論が,数時間から数日,あるいは数年かけて書籍や Web を彷徨いながら,徐々に方法論として固まってきたというストーリーを感じます..NET が登場して何年もたった 2009 年だからこそ現れたように思える本でした.
惜しむらくは各ノウハウの情報源に関しても詳細なリファレンスが付いていればというところでしょうか.とはいえ Web のあちこちに情報が偏在するような昨今ですので,リファレンスを付けたとしてもひたすら URL のリストが続くだけとなっていたかもしれません.本書が扱っているのは,そういう,本来まとめにくいテーマです.まずはこうして現場のベストプラクティスが,書籍の形で確かに形式化されたことを喜びましょう.

P.S. 本書の表紙には ALMA 提供の写真が使われています.ALMA の建設に携わっている方に以前お話を伺ったことがあったので,妙なご縁を感じてしまいました.